ハイブリッド車
ハイブリッド車とは,2つ以上の動力源を持つ自動車の通称。通常はエンジン(内燃機関)と電動モーターを動力源として備えた車のこと。
20世紀末頃からガソリンエンジンと大容量バッテリーを搭載したハイブリッド車が日本で販売された。エンジンによる発電に加え回生ブレーキを併用して,主に低速時に電動モーターを用いて走行することでエンジン単独で走行するのに比べトータルな燃費を向上させた車。
現在のハイブリッド車では40km/Lに達する車やPHEV車では60km/Lという車も登場している。
現在では自動車メーカー各社からハイブリット車が徐々に販売されている。
一言でハイブリット車と言ってもいくつかの仕組みや方式がある。そこでどの様なタイプがあるのか調べてみた。
ハイブリットシステムの種類
現在のハイブリッドシステムを駆動方式で分けると以下のような3タイプに分けられる。
- パラレル方式(並列方式)
搭載している複数の動力源を車輪の駆動に使用するタイプ。
エンジン(内燃機関)の出力はトルクx回転数ということになるので,低回転時には十分なパワーが得られず,停車時にはアイドリングをするなど効率も悪く,CO2等の有害な排ガスが多くなってしまう。
一方,電動モーターは動作を開始したときから最大トルクを発生することが出来る。
そこで,発進時や急加速時などのエンジンが苦手とする熱効率が悪く有害排ガスの多い範囲を,電動モーターに受け持たせたる考えがパラレル方式。
搭載する電動モーターに出力が小さいものを使って,動作の範囲を限定的なものにしたものをマイルドハイブリッドと言ってもいるが,これもパラレル方式の一種ではある。
通常のパラレル方式では駆動用と発電用を兼ねた電動モーター/発電機を1個使う。またシリーズ方式と違いエンジンでの駆動も出来るので,効率面でシリーズ方式よりは優れていると言える。
ただ電動モーター/発電機が1個なので,駆動と発電・充電が同時に出来ないという欠点がある。
一般的にハイブリッド車というとパラレル式を指すことが多いようだ。
- シリーズ方式(直列方式)
シリーズ方式(直列方式)は,エンジンを発電機として使用して,その発電した電気で電動モーターを駆動し走行する方式。
エンジンで発電した際の余剰電力および回生ブレーキにより発生した電力を,バッテリーに充電・回収してその電力を電動モーターの動力源として使用している。
つまり,電気自動車(BEV)に,発電用のエンジンと発電機を搭載したものになる。電気自動車から発電部分を追加することで開発することが可能となる。
電動モーター駆動であるため出力制御が容易で,通常の自動車に必須なトランスミッションが不要になることも利点であるが,エンジンと電気自動車のシステムが同時に共存するため,システム占有体積と重量が大きくなることと,エンジン動力を電気に変換する際の熱エネルギー損失が多くあり,回生制御がうまく働かないと効率が落ちることが欠点となる
- スプリット方式
パラレル式のようなエンジンと電動モーターの両方の出力と,シリーズ式のようなエンジンによる発電・充電・電動モーター駆動とを,同時に切り替えながら使用する方式。
エンジンからの出力を遊星歯車を用いた動力分割機構により分割(スプリット)して,発電機と駆動軸へと振り分ける。
駆動軸には別の駆動アシスト用の電動モーターが接続されていて,エンジンと電動モーターとの出力を合成する方式。このためエンジンでの出力の一定割合が停車時を含め常に駆動軸へかかることになる。
エンジンと駆動軸との接続を切断した状態にすて駆動用の電動モーターを動かせばEV走行が,減速時などで電動モーターで発電をすれば,充電が可能になる。
発電機・駆動用電動モーター共々停止すれば,ニュートラルの状態となる。
このようにして,発進時や低速走行時にはバッテリーに蓄えられた電気を使ってEV走行し,通常加速時や中高速定常走行時には燃料消費率の良好となる回転域でエンジンで走行出来る。
このようにエンジンを,発電用と走行用で両方で使用する方式である。
こうした機構によりエンジンと駆動軸とが機械的に分離されていることで,エンジンの運転状態の自由度を高くできるシリーズ式の利点と,エンジンから駆動軸へ直接トルクを伝達する経路を設けることで損失を抑制できるパラレル式の利点とを得られる。
またエンジン駆動を出来るだけ抑えることで,大きな燃費向上が可能になる。
スプリット方式のハイブリッド車に,大きな容量のバッテリーを搭載して外部からバッテリーに充電できるようにしたプラグイン・ハイブリッド(PHEV)もこの方式の一種になる。
構成が複雑になるためコストも高いものになる。日本においては,購入価格の税制優遇が受けられたりローンの金利や保険や売却時のリセールバリューなどへの有利になる点もある。
また,搭載している電動モーターの役割度合で分けると,次のような3タイプに分けられる。
- マイクロ・ハイブリッド
電動モーター/発電機を使って,アイドル停止からエンジンを再始動したり,バッテリーに回生充電をしたりする方式。
従来のセルモーター(スターター)とオルタネーターを別々に搭載していた代わりとして,セルモーターの役割と発電機の役割も一つで行うISG(Integrated Starter Generator)を搭載するようになってきている。
- マイルド・ハイブリッド
マイクロ・ハイブリッドに加え,エンジンでの走行を電動モーターでアシストを行う方式。エンジンでの走行が主となる。
基本的に電動モーターの出力は低い物が使われ,バッテリーも容量が小さい物を搭載する。短い距離(数km)ではあるが,EV走行出来る車もある。
マイクロ・ハイブリッドでも使われるISGを使ってエンジンのアシストを行う(欧州メーカーに多い)システムや,ドイツで主導している電動モーター等を48Vで動作させるシステムも増えてきている。
メリットは車の価格上昇を抑えつつ燃費を多少良くする事ができたり,低速での性能を上げたりできる。
- ストロング・ハイブリッド
マイルドハイブリッドに加え,純粋なEV車には劣るがある程度の距離を電動モーターのみで走行できる方式。
エンジンの燃費を大きく改善する事が出来る。
ハイブリッド車の特徴
ハイブリッド車は,以下のような特徴を持っている。
- 回生ブレーキ
減速時に電動モーターを発電機として利用することにより,運動エネルギーを電気に変換してバッテリーに充電する。新幹線でも行われている。
- エンジン
電気モーターが出力をアシストするため,搭載するエンジンは車両重量に対して排気量を小さくして出力を抑えたものやアトキンソンサイクルなどのより軽量化・高効率化したものなどを使用することが出来るようになる。
また,熱効率の高いエンジンであるロータリーエンジンの利用も研究されている。
THSやi-MMDに代表されるストロング・ハイブリッドでは,エンジンを駆動用に使用している間も充電が行えるため,安定した高効率を実現できる。
- EVモード
エンジンを停止しバッテリーの電力を使って電気自動車と同じように走行するのことを,EVモードと呼んでいるようだ。
EVモードを持っている車は,低速域や低負荷域(平坦な道や下り坂の続く道)ではエンジンの燃料を全く使わずに走れるため,圧倒的な低燃費を実現出来る。
また,エンジンを停止すると静粛性・振動といった快適性が大きく向上する。
このEVモードをうまく使えるかどうかが,ハイブリッド車として実用燃費に大きく左右する。
プラグイン・ハイブリッドでは外部から十分に充電をすることで,搭載されている大きなバッテリーにより50km以上の距離をEVモードで走行することも可能になっている。
- 全輪駆動
通常の駆動輪ではない側に電動モーターを追加することで,トランスファー,センターデフ,プロペラシャフト等が不要となるAWD車が容易に実現可能である。
- 給電コンセント
エンジンと電動モーター/発電機によりバッテリーに充電されたエネルギーを,外部に取り出せるようにしたハイブリッド車もある。
アウトドアはもちろん,停電や災害,遭難などの非常時にも電気を利用できるようになる。
各社の4WDハイブリッドシステム
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