Raspberry Piの産業用途向け anchor.png

開発・製造元は意図していなかったものの,Raspberry Piの産業用途向けに利用しようとする人は多くなっている。出荷数も累計1500万台を越えていて,単なる教育用・趣味(おもちゃ)だけにはとどまっていない。
これは,Raspberry Piを開発したEben Upton氏も驚いているそうだ。

2016年秋から,日本の愛知県にあるソニーの稲沢工場でも生産が開始されている。

  • なぜ産業向けにRaspberry Piを使いたいのか
    私のように,電子回路や工作が趣味で,それが結果的に仕事にしている人も多い。そのようなエンジニアが,産業用途で使える組み込みコンピュータのとしてRaspberry Piを考えると,価格が安価の割には機能が豊富で使いやすい。通常は,製品を自分で開発するのだが,その開発期間や開発コストを圧倒的に短縮出来るからと思われる。

    このため,その製品開発コストを製品に転嫁せずに済むため,安価で実現できるようにもなる。

これらの理由から,産業用途にRaspberry Piを使いたいなと思うわけです。

Page Top

産業用途として使用する場合の問題点 anchor.png

しかし,Raspberry Piを産業用途で使用しようと思った場合,次のような様々な問題を解決する必要がある。

  • 電源スイッチが無い
    Raspberry Piには,電源スイッチは無いです。これは価格を安くする理由からです。電源スイッチや電源回路はボードのサイズや部品点数が意外とかかり,実際に搭載すると価格に大きく影響します。
    もともと教育用のコンピュータなので,とにかく動くものを安価に提供することが優先されたと思われます。
    産業用途で使用する場合,このことはなんらかの方法で対応する必要があります。
  • 電源の安定性がRaspberry Piへ様々な影響を及ぼす
    これも上記と同様の理由で,電源の安定性を確保したり,安全にOSをシャットダウンできる機能は省かれました。この結果,OSなどのファイルシステムが壊れやすいものになってしまっています。
    また,電源自体はACアダプタ利用を想定し,入力コネクタはMicroUSBコネクタとなっている。これも産業用途で使用する場合,信頼性・安定性を落としている原因になっています。
    産業用途で使用する場合,上記と同様になんらかの方法で解決する必要があります。
  • 連続運転や高負荷時の安定性と放熱に問題がある
    高負荷時になるとCPUがひどく発熱しますが,Raspberry Piではヒートシンク等の対策はいっさい取られていません。
    結果,高負荷時に動作が停止してしまったり,ファイルシステムが壊れたり,様々なトラブルが発生してしまいます。
    ヒートシンクを取り付けての対策や,用途によっては強制放熱を行う必要があります。
  • ストレージにSD/MicroSDカードを使用している
    ブートローダー,OS本体,各種プログラムなどの格納に,安価なMicroSDカードを使用していて,またストレージのみの利用となっている。
    この結果,MicroSDカードの書き込み回数限度の影響から,通常に動作させていると数ヶ月で使用出来なくなってしまうことも多く,結果システムが動作しなくなります。
    産業用途に使用する場合,この問題は致命的な問題です。対策としては,MicroSDカードの利用はReadのみにするなどの工夫する必要があります。しかしこの場合,実装しているRAMリソース不足になる場合もあります。
  • EMC対策が全くされていない
    Raspberry PiはSBCで販売されている。ボードとしても価格重視な設計のためEMC対策はまったく行われていない。
    産業用途で利用する場合,EMC対策をどのようにするかが大きな課題となるが,ボードで対策がされていないため製品全体で満足なEMC対策をすることは技術的に結構なコストがかかってしまう。
  • 拡張ボードが使えない
    Raspberry Pi自体は単なるコンピュータボードなわけだが,拡張コネクタを使用して,たくさんの機能を拡張するボードが販売されている。
    また,そのようなボードも比較的低価格で開発できる。
    しかし,このような拡張ボードなどを産業用途で使おうと思うと,筐体の問題やどのように拡張機器を取り付けるかなどが問題となる。また,I/Oなどを拡張する時に絶縁タイプや高電圧使用にも対応する必要があります。
    これらの理由により,市販されている一般的な拡張I/Oボードや各種センサーボードなどは,残念ながらそのままでは使用出来ないと考えていいです。

これら様々な問題点をすべて対策して産業用途に利用する場合,結果的には製品全体のコストとしては,それなりの高いものになってしまうと思います。
これらの対策を行ったRaspberry Piベースの製品が実際に発売されていますが,かなり高価格(20000円から50000円程度)な製品となっています。

このように,実際に産業用途に使うようにした場合,その目的に最初から開発された他の製品と価格的には変わらないものになるのはしょうがないとは思います。

Page Top

産業用途向けRaspberry Pi製品 anchor.png

現在販売されている産業向けRaspberry Piと言うような製品を紹介します。

Page Top

独Hilscher社のnetPI anchor.png

Hilscher社のnetPIは,FA用途,IoT用途,エッジコンピューティング用途に,Raspberry Piと同じチップ・アーキテクチャーを使用して,独自のハードウェア設計を行った製品。Raspberry Piを使用した製品ではありませんが・・・
Ethernetを計3個搭載した製品も用意されている。電源対策も万全で(DC19.2-28V),Wifi,Bluetooth,RTCを搭載,また,オンボードで8GBのMLC NAND Flashメモリーを搭載し,さらにNVRAM(不揮発性RAM)として8KB FeRAMも搭載されている。

このような製品がなかなかないんだよね。これは,このメーカーが組み込み機器として必要性をよく理解していることの証である。
EMC対策もバッチリ行っているようです。DINレール対応で,動作環境温度は-20度から+60度となっている。

筐体下部から拡張I/Oやインターフェースを搭載できるように設計されている。

OSは,Hilscher社が実装したYocto Linux(組み込み製品向けに標準化したLinuxで,IntelとWind Riverが主に開発している)で,高いセキュリティも確保できるように工夫されている。

NIOT-E-NPI3-EN

netpi.png

データシート:

netIOTショップで214.20euro(27000円)で,まあまあ高いです。 日本では,ダイトロン から購入できるようです。

Page Top

独KUNBUS社のREVOLUTION PI anchor.png

KUNBUS社のREVOLUTION PIは,一般的なRaspberry Pi本体をそのまま使用しているのではなく,組込み用と向けのRaspberry PiモジュールのCompute Module 3を使用した製品。

Compute Module 3は,Raspberry Pi 3Bに搭載しているSoCと同じチップ(Broadcom BCM2837),1GB DRAM,4GB eMMC Flash Memory(MicroSDカードの代わりに使用できる)を実装した小さいボード。
他のファンクションを実装した拡張ボードに,このCompute Module 3を挿入したアーキテクチャーとしている。

産業用途向けに,DINレール,RTC(リアルタイムクロック)の内蔵,動作環境温度も-40度から+55度となっている。

製品によって,Wi-FiやBluetoothを実装していないモデルもある。

電源もDC12~24V入力となっている。

EtherCATに対応した製品や,デジタルI/O,アナログI/O,Gatewayモジュールなどの拡張モジュールも用意されている。
価格はかなり高価である。https://revolution.kunbus.de/shop/de/hardware ベーシックなRevPi Core3で税込242.76euro(30600円)
RevPi Core3

core3.png

データシート:
Amazonでも購入できるようだが,34560円です。

Page Top

ビズライト・テクノロジー社のBH2/BH3 anchor.png

BH2/BH3は,日本の会社がRaspberry Pi2/Raspberry Pi3をそのまま使用した産業用途向け製品。
電源をDC UPS化しピンヘッダーでの入力にして,電源スイッチを搭載,金属ケースでのノイズ対策・熱対策をしている。RTCを搭載。I/O拡張には対応していない。

ストレージはMicroSDカードそのままで,これに起因する問題は解決されない。動作温度も,0度から40度といったRaspberry Piそのままです。

この仕様で産業用途と言っているが,ちょっと無理があります。

BH3

bh3.png

データシート:

チップワンストップから購入できるが,BH3が40000円とこのスペックでは高すぎますね。


新しくコメントをつける

題名
ゲスト名
投稿本文
より詳細なコメント入力フォームへ

トップ   凍結 差分 バックアップ 複製 名前変更 リロード   ページ新規作成 全ページ一覧 単語検索 最新ページの一覧   ヘルプ   最新ページのRSS 1.0 最新ページのRSS 2.0 最新ページのRSS Atom
Counter: 1866, today: 1, yesterday: 0
最終更新: 2020-12-26 (土) 16:07:52 (JST) (1211d) by yuji