PC​/Windows​/PCのHDDを丸ごとHDD・SSDにコピーする

PCのHDDを丸ごとHDD・SSDにコピーする

PCに搭載しているストレージには長らくHDDが使われていました。最近になってより高速で読み書きが可能なSSDが使われてきている。

PCのストレージの空き容量が少なくなってきたりHDDが調子悪くなってきたために，新しい大容量なHDDに交換したり，より高速なSSDに交換したい事がある。

こんなときには，現在のPCに使っているHDDを丸ごと新しいHDDやSSDにコピー（クローン）すると，比較的容易に交換することが出来る。

またバックアップという視点でも，現在のHDDをコピー（クローン）したHDD・SSDを用意しておくという考え方もあります。

• HDDが壊れる前にHDDのデータを丸ごと新しいHDDまたはSSDへ移行したい。
  
• 空き容量が少なくなってきたので大容量なHDDやSSDに交換したい。
• 古いPCを更に何年間か使う目的でHDDまたはSSDに交換したい。
  
• 速度が早いSSDに交換してPCを快適に使いたい。
  
• PC全てのデータをバックアップするときに簡単な方法で行いたい。
  

SSDの種類

新しいストレージであるSSDには，その形状や機能からSATA SSDとM.2 SSDという2種類がある。

• SATA SSD
  SATA SSDはPCに実装するときに使用するインターフェースに従来のHDDと同じSATAインターフェースを使うタイプ。
  大きさや取り付ける時のネジ穴なんかもHDDと互換性を持つように作られていて，HDDの代わりにSSDを使う場合はこのタイプを利用する。
  もちろんHDDに比べ転送速度も，約3倍以上高速になる。
  
• M.2 SSD
  M.2 SSDはメモリーモジュールのような形状を持ったSSD。PCには専用のコネクタを使用して実装する。
  実際のインターフェース仕様にもSATAタイプとPCI-eチャネルを使うものがあって，相互に互換性はないので注意する。
  

SSDのタイプと速度：

SSDのタイプ	接続規格	プロトコル	速度
SATA SSD	SATA	AHCI	550MB/s
M.2 SSD	SATA	AHCI	550MB/s
M.2 SSD	PCI-e	NVMe	3200MB/s

M.2 SSDにする場合，PCに対応インターフェースがあるか，またそれはSATAかNVMeかを確認した後SSDを選択する必要があります。
エッジコネクタの切り欠きが1個の物がNVMeで高速で動作する物。

ストレージの管理方法 MBRとGPT

PCでのストレージの管理方法には，MBRとGPT(GUID Partition Table)の2種類の方法がある。

• ブートモード違い
  PCに搭載されているfirmwareには，昔から使用されているBIOSと最近のPCで使われているUEFI BIOSがある。
  BIOSではMBRのストレージのみをサポートし，UEFI BIOSの場合はGPTのストレージ（MBRも使用できる）をサポートしている。
  
• OSでの対応
  MBRは全てのOSで使用できる。
  GPTは新しい管理方法なので，古いOSでは使用できない。
  Windows XPやWindows Server 2003ではGPTは使用できないが，Windows 7以降のWindowsやWindows Server 2008以降ではGPTが使用できる。
  
• 対応できるストレージサイズが違う
  MBRでは管理できる最大のストレージサイズは2TBになる。
  GPTではストレージサイズに制限は無い。
  このため2TB以上のディスクサイズのストレージを使用したい場合は，GPTを使用することになる。
  
• 作成可能なパーティションの数が違う
  MBRでは合計4つのプライマリーパーティションが作成できる。
  GPTではOSの制限がなければ作成可能なパーティションに制限は無い。
  
• 安全性の違い
  MBRでは管理領域が壊れた場合はストレージが利用できなくなってしまう。
  GPTでは管理領域のバックアップがあるので，修復がしやすい。
  

MBR

本来のMBR（Master Boot Record）は，1983年にIBM PCでPC DOS 2.0をブートするために使われたストレージの先頭に書かれた小さなブートローダープログラムのことである。
当時はMBRとは特に言ってはいなかったが，現在ではストレージの管理方法を区別するためにこの方式で管理しているストレージをMBRと一般的に呼んでいる。

• MBRセクター
  使用中のストレージの一番先頭に置かれ512byteのサイズで固定の領域。
  ストレージからブートするためのマスターブートコード（446byte）とディスクパーティションテーブル（DPT，64byte）とブートサイン（2byte）がある。
  もしこのセクターに破損があるとストレージ（ディスク）は使用できなくなってしまう。万が一の場合を想定してバックアップが別の場所に保存されている。
  このバックアップを使ってMBRを修復する事ができる。
  
• パーティション
  ストレージ（ディスク）でデータを保存する時に，複数の領域（パーティション）に分けることができる。プライマリーパーティションと拡張パーティションの2種類の領域で管理される。
  プライマリーパーティションは，OSやデータを保存することができブートすることができる。
  拡張パーティションはその中を更に分割して論理パーティションに分けることが出来，ドライブレターをアサインできる。
  プライマリーパーテーションは，最大4個まで作成できる。
  MBRでは管理できる容量がストレージのサイズは2TBまでになる。つまり2TB以上のHDDを使用しても2TBまでしか使用できない。
  

GPT

GPT（GUID Partition Table）は，MBRの欠点を解決したストレージ管理方法。

• 保護MBR
  GPTの一番先頭にあるセクターで，MBRストレージと同様にMBRセクターになる。
  この保護MBRはMBRディスクのみに対応しているツールから，GPTパーティションを破壊することを防ぐ目的で使われている。
  
• プライマリーGPTヘッダー
  GPTの2番目のセクターには，プライマリーGUIDパーティションテーブルヘッダーがある。
  プライマリーGUIDパーティションテーブルヘッダーは，パーティションテーブルからなるパーティションエントリーの場所とサイズ情報と，CRC32のチェックサムで構成されている。
  
• パーティションエントリー
  三番目のセクターから30-40番目のセクター（合計32個セクター）の部分は，パーティションエントリーになっている。
  一般的にはGPTでは無制限にパーティションが作成可能だが，OSによってはパーティション数が制限される場合がある。例えばWindowsではパーティションエントリーのサイズは128byteなので，パーティションを最大128（32*512/128）個作成することができる。
  
• パーティション
  GPTではプライマリーパーティションを無制限に作成することができるので，拡張パーティションや論理パーティションといった概念は無い。
  
• バックアップパーティションエントリー/プライマリーGPTヘッダー
  GPTはディスクの最後にあるプライマリーGPTヘッダーとパーティションエントリーを自動的にをバックアップしている。これは，安全性と信頼性を高めるための工夫となっている。
  GPTヘッダーやパーティションテーブルが破損すると，これらのバックアップからデータを復元できる可能性がある。
  

HDD・SSDクローンツール

HDDやSSDを丸ごとコピー（クローン）することが行える無料で使用できるツールには，いくつかの製品がある。

• EaseUS Disk Copy
  古いバージョンのEaseUS Disk Copyは，HDDの丸ごとまたはパーティション単位でのコピーができる無料で使用できるディスクコピー・クローンツールだった。
  光学ドライブまたはUSBメモリ（ドライブ）などに書き込んで，そこからブートして使用する。
  私は古いバージョン2.3をHDDのコピーで良く使っていた。この古いバージョン2.3では，MBRのディスクしかコピー出来ないのと，1TB以上のディスクはコピー出来ないなどの制限がある。
  
• EaseUS Todo Backup
  ディスク/パーティション，フォルダー/ファイル，システムをイメージファイルとしてバックアップ出来て，スケジュール設定による定期的なバックアップにも対応している。
  無料版でもディスクのコピーやパーテーション毎のコピーはできる。MBRからGPT（もしくはGPTからMBR）へのコピーには対応していないようだ。
  コピー元のストレージがMBRならクローンする側もMBR，コピー元のストレージがGPTならクローンする側もGPTにする必要があるので注意する。（2TB以上のストレージの場合はGPTで出荷されている場合が多い。）
  無料版のバージョン12から残念ながらクローン機能は使えなくなった。バージョン11.5までは無料版でもクローン機能は使える。
  通常はPCにインストールして使用する。しかし，光学ドライブやUSBメモリ（ドライブ）などにブータブルディスクを作成してそれでブートしても使用できる。
  
• Macrium Reflect Free
  Macrium Reflect Freeは，無料でストレージを丸ごとクローンすることが出来るツールだった。
  ダウンロード時にメールアドレスを登録すると無料のライセンスコードが発行された。インストール時にPCのウィルス対策ツールを停止しておかないと，インストール出来ない場合がある。
  容量が違うHDD・SSD間でも，手動でサイズを調整しながらクローンすることが出来る。
  現在は30日間のTrial版のみが配布されている。
  
• AOMEI Backupper Standard
  ドライブやパーティションを丸ごとバックアップできる無料で使えるツール。
  無料版ではMBRからMBRのストレージにクローンすることはできるが，GPT -> GPTやMBR -> GPT等は出来ない。またデータ・ストレージのクローン機能のみ使用できる。
  しかしPCにインストールした後ブータブルDISKを作成しそれでブートして使用すると，GPT --> GPTでもクローン出来るようになる。無料版ではブータブルDISKが作成できなくなってしまった。
  クリスマス時期になるとクローン機能に制限がないPro版の1年間無料で使用できるライセンスコードがもらえることがある。
  
• MiniTool Drive Copy
  HDDの丸ごとまたはパーティション単位でのコピーができる無料で使用できるディスクコピー・クローンツール。
  容量が違うHDD・SSD間でも，クローンすることができる。
  対応するファイルシステムは，FAT12，FAT16，FAT32，VFAT，NTFS，NTFS5で，つまりWindowsのディスクやパーティションしか扱う事は出来ない。
  クローン機能は古いバージョンのみ対応している。PCにインストールして起動して使用する。
  
• MiniTool ShadowMaker
  ストレージのバックアップ，スケジュール設定に対応しているバックアップツール。
  無料でGPT -> GPTもクローン出来るツール。
  どうもディスククローン機能は，メインの機能ではなくオマケみたいだ。パーティション調整とか4Kアライメント調整などの細かい設定は出来ない。
  容量が大きなストレージにクローンする場合は，自動的にパーテーションを大きくしてくれるので便利。
  光学ドライブやUSBメモリ（ドライブ）などにブータブルディスク（WinREも含む）を作成してそれでブートしても使用できる。
  
• Clonezilla
  Clonezillaは無料で使用できるパーティションとディスクイメージのクローンが作成できるオープンソースで開発されているツール。
  MBRとGPTに対応していて，HDD全体または単一セクターをコピー・復元することができる。
  また，ネットワーク経由や複数のターゲットに対してのクローンもサポートしている。
  光学ドライブまたはUSBメモリ（ドライブ）などから起動して使用する。
  クローン側は，元のソース側よりサイズが同じか大きいサイズのものが必要になる。（小さいサイズにはクローン出来ない。）
  クローン先が大きいサイズの場合でも，拡大しながらのクローンは出来ない。なのでクローン後にパーテーション・ツールで拡大する必要がある。
  バックアップツールとしては，差分/増分バックアップには対応していない。
  

注意点とクローンしたストレージからブート出来ない場合

クローンしたストレージを以前のストレージと交換後，PCを起動してもブート出来ない場合がある。
ブート出来ない理由はいくつかの原因がある。

BIOSを使っているMBRディスクのクローンの注意

MBRディスクをクローンしてブート出来ない場合は，以下のことが原因の場合がある。

• クローンしたHDD/SSDのCドライブがアクティブになっていない場合
  Cドライブがアクティブフラグがセットされていないとブート出来ない。
  アクティブ化するにはインストールDVD等でPCを起動して，コマンドプロンプトを起動する。
  
  • 以下のコマンド操作をする
    

    diskpart
    list disk
    select disk 0　              <--- クローンしたDiskを指定
    list partition
    select partition 2           <--- Cドライブを指定
    active
    exit

• ブート領域の修復が必要な場合
  ブート領域を修復するにはインストールDVD等でPCを起動して，コマンドプロンプトを起動する。
  
  • 以下のコマンド操作をする
    

    bootrec /Rebuildbcd
    bootrec /fixboot
    bootrec /fixmbr

UEFIを使っているGPTディスクのクローンの注意

UEFIでセキュアブートが有効にしているままディスクをクローンすると，クローンしたディスクではほぼブート出来なくなる。
クローンディスク以外でもビデオカードやその他周辺機器の交換などでも，ブート出来なくなる場合がある。

なので注意することとして，クローンツールはUEFI対応のものを使い，さらにPCのUEFIの設定を以下のように変更した上でクローン作業をする必要がある。

• セキュアブートは無効にする。
  セキュアブートは，OSの電子署名を検証して正常なもののみブートする機能。Windowsでは8以降からMicrosoftの電子署名がされている。
  
• CSM(Compatibility Support Module)設定を有効にしてレガシーBIOS互換モードにする。
  
• OS側で高速スタートアップ無効，IRST(Intel Rapid Storage Technology)無効にする。
  
• 前もってクローン側のディスクを初期化しておく。
  管理者権限でコマンドプロンプトを起動して，以下のコマンド作業をする。
  

  diskpartを起動する。
  

  > diskpart

  接続されたディスクをリスト表示する。
  

  DISKPART> list disk

  クローン先のDiskを選択する。
  

  DISKPART> select disk 1

  ディスクの詳細を確認する。
  

  DISKPART> detail disk

  ディスクを初期化する。
  

  DISKPART> clean

  DISKPARTを終了する。
  

  DISKPART> exit

  これでディスクを初期化出来る。

ブート出来ない場合の対応

もし，クローンディスクでブートできない場合は以下のような作業を行うと復旧できる。
これは多くの場合，クローンディスクでのBCD領域の内容が実際のOSの位置と合っていないのが原因。

なのでBCD領域を修正する。

• インストールメディアから起動して，Shift+F10でコマンドプロンプトを起動する。
  
• 以下のコマンド操作をする。
  

  > bootrec /Rebuildbcd

  「合計数: 1」と表示された場合は，ブートレコードは正常に修復出来ている。
  「合計数: 0」の場合や「要求されたシステム デバイスが見つかりません」と表示された場合は，さらに以下のようにして修復する。
  

  > diskpart
  diskpart> list volume                           <-- Ltrの項目を確認しておく
  diskpart> select volume X (ドライブ番号)        <-- FAT32のドライブがブート領域
  diskpart> assign letter=b: (ドライブレター例)
  diskpart> exit
  > b:
  b:> cd /d b:\EFI\Microsoft\Boot
  b:> ren BCD BCD.bak                             <-- del bcdでも良い
  b:> bootrec /Rebuildbcd
  b:> bootrec /fixboot
  b:> bcdboot c:\Windows /l ja-JP /s b: /f ALL    <--  bcdboot c:\Windows /l ja-JP でも良いかも
  b:> exit

  上記の作業を終了したら，コマンドプロンプトを終了してインストールメディアでの回復環境に戻る。（まだ，再起動はしない）
• この後，スタートアップ修復を2回行う。
  これは，Windowsのブート領域が通常のWindowsとは異なっているような場合，2回必要になる場合があるから。
  
  • Windowsの回復環境の起動画面のトラブルシューティングを選ぶ。
    
  • スタートアップ修復を行う。
    修復過程でユーザーアカウントの確認があるのでパスワードをタイプする。
    クローンしたディスクの場合は2回目のスタートアップ修復で，この確認がある。
    
  • Windowsを起動して回復環境が正常かどうか確認する。