開発・製造元は意図していなかったものの,Raspberry Piの産業用途向けに利用しようとする人は多くなっている。出荷数も累計1500万台を越えていて,単なる教育用・趣味(おもちゃ)だけにはとどまっていない。
これは,Raspberry Piを開発したEben Upton氏も驚いているそうだ。
2016年秋から,日本の愛知県にあるソニーの稲沢工場でも生産が開始されている。
このため,その製品開発コストを製品に転嫁せずに済むため,安価で実現できるようにもなる。
これらの理由から,産業用途にRaspberry Piを使いたいなと思うわけです。
しかし,Raspberry Piを産業用途で使用しようと思った場合,次のような様々な問題を解決する必要がある。
これら様々な問題点をすべて対策して産業用途に利用する場合,結果的には製品全体のコストとしては,それなりの高いものになってしまうと思います。
これらの対策を行ったRaspberry Piベースの製品が実際に発売されていますが,かなり高価格(20000円から50000円程度)な製品となっています。
このように,実際に産業用途に使うようにした場合,その目的に最初から開発された他の製品と価格的には変わらないものになるのはしょうがないとは思います。
現在販売されている産業向けRaspberry Piと言うような製品を紹介します。
Hilscher社のnetPIは,FA用途,IoT用途,エッジコンピューティング用途に,Raspberry Piと同じチップ・アーキテクチャーを使用して,独自のハードウェア設計を行った製品。Raspberry Piを使用した製品ではありませんが・・・
Ethernetを計3個搭載した製品も用意されている。電源対策も万全で(DC19.2-28V),Wifi,Bluetooth,RTCを搭載,また,オンボードで8GBのMLC NAND Flashメモリーを搭載し,さらにNVRAM(不揮発性RAM)として8KB FeRAMも搭載されている。
このような製品がなかなかないんだよね。これは,このメーカーが組み込み機器として必要性をよく理解していることの証である。
EMC対策もバッチリ行っているようです。DINレール対応で,動作環境温度は-20度から+60度となっている。
筐体下部から拡張I/Oやインターフェースを搭載できるように設計されている。
OSは,Hilscher社が実装したYocto Linux(組み込み製品向けに標準化したLinuxで,IntelとWind Riverが主に開発している)で,高いセキュリティも確保できるように工夫されている。
NIOT-E-NPI3-EN
データシート:
netIOTショップで214.20euro(27000円)で,まあまあ高いです。 日本では,ダイトロン から購入できるようです。
KUNBUS社のREVOLUTION PIは,一般的なRaspberry Pi本体をそのまま使用しているのではなく,組込み用と向けのRaspberry PiモジュールのCompute Module 3を使用した製品。
Compute Module 3は,Raspberry Pi 3Bに搭載しているSoCと同じチップ(Broadcom BCM2837),1GB DRAM,4GB eMMC Flash Memory(MicroSDカードの代わりに使用できる)を実装した小さいボード。
他のファンクションを実装した拡張ボードに,このCompute Module 3を挿入したアーキテクチャーとしている。
産業用途向けに,DINレール,RTC(リアルタイムクロック)の内蔵,動作環境温度も-40度から+55度となっている。
製品によって,Wi-FiやBluetoothを実装していないモデルもある。
電源もDC12~24V入力となっている。
EtherCATに対応した製品や,デジタルI/O,アナログI/O,Gatewayモジュールなどの拡張モジュールも用意されている。
価格はかなり高価である。https://revolution.kunbus.de/shop/de/hardware ベーシックなRevPi Core3で税込242.76euro(30600円)
RevPi Core3
データシート:
Amazonでも購入できるようだが,34560円です。
BH2/BH3は,日本の会社がRaspberry Pi2/Raspberry Pi3をそのまま使用した産業用途向け製品。
電源をDC UPS化しピンヘッダーでの入力にして,電源スイッチを搭載,金属ケースでのノイズ対策・熱対策をしている。RTCを搭載。I/O拡張には対応していない。
ストレージはMicroSDカードそのままで,これに起因する問題は解決されない。動作温度も,0度から40度といったRaspberry Piそのままです。
この仕様で産業用途と言っているが,ちょっと無理があります。
BH3
データシート:
チップワンストップから購入できるが,BH3が40000円とこのスペックでは高すぎますね。
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