1962年に磁気テープに音を記憶して利用するメロトロンという楽器が誕生した。現在のサンプラーの元になったような楽器だった。(驚くことに現在でも販売されている)
記憶した音だけでなく,その音にエフェクトをかけたり重ねたり,タイミング制御をすることで音色を変化させたりして,徐々に音が作れるように進化していった。
さらに半導体技術が向上して,メモリーを使用した音源モジュールに進化している。
このようなアイディアをシンセサイザーに応用したものがサンプル音源シンセサイザー呼ばれている。このサンプル音源シンセサイザーの音色データを表のように並べて複数の異なる音色データを組み合わせて使用出来るようにしたものがWAVEテーブルシンセサイザー(Sequential Circuits Prophet VSとかYamaha SY22とかKorg WAVESTATION・・・)になった。
楽器の音源として使う場合は,MIDI信号を使って発音するようなシステムになっている。
また,サンプル音源の音データを入れ替えることで様々な音色に対応することが出来る製品もあった。
このような入れ替え可能なサンプル音源のセットを,ライブラリーと呼んだりもする。
また上記のような楽器としてではなくPCで音を出力するシステムとして,サンプリングした音色データをうまく加工して発音するSound BlasterやGravis UltraSoundというSound Cardが販売された。そのSound Cardが使用する音色データをSoundFontとかGUS Patchとか呼ぶようになった。
シンガポールのCreative Technology社が開発したPC用のSound CardにSound Blasterがある。
SoundFont(サウンドフォント)は,Sound Blaster及び対応ソフトウェアが使用する音色データのこと。
ファイルの拡張子はファイルフォーマットがSoundFont 1の場合が*.sbk,SoundFont 2が*.sf2になる。一般的に使われるのは.sf2。
SoundFontはもともと米E-mu Systemsで開発されたが,Creative TechnologyにE-mu Systemsが買収されて(その後Ensoniqも買収された)から広く使われるようになった。
このSoundFontと呼ばれていた音色データは,Sound CardのROMに実装されていたり,dataファイルとしてPCのMemoryやSound Card上のMemoryに読み込んで使うようになっていた。
一般的なSoundFontは,GM(GS)音色配列として用意されていることが多い。
自分でサンプリングした波形データから,sf2ファイルを作成することが出来る。
またインターネット上に多くのSoundFontが公開されている。
当初SoundFontはPCのSound Cardで使用する音色データのため,プロのミュージシャンや音楽マニアからはあまり相手にされていなかった。
カナダAdvanced Gravis Computer Technology Ltdが開発したPC用のSound CardにGravis UltraSound(GUS)があった。
このGravis UltraSoundは,PCM音源の音色データ(5.6Mbyte)をRAMにロードし,音源合成してMIDI音源を実現していた。
このGUS用の音色データ(.pat)を,Patchデータと呼んでいた。
GUS PatchもSoundFontと同様な音色データで,使用方法はSoundFontと同じように使用する。
通常はPCに上記のようなSound Cardを挿入してMIDIデータを再生する場合やMIDI音源として使用する場合,その音色データとしてSoundFontやGUS Patchを使用する。
この場合,Sound Cardに搭載されている専用のICを使って演算を行い音を出力していた。
その後PCの性能が向上したことで,上記のSound Cardにある専用のハードウェア機能を使わずに,PCのCPUのソフトウェアだけでMIDI音源モジュールやMIDIプレーヤーとして実現出来るようになってきた。
この時に音色データとしてSoundFontやGUS Patchを利用出来るようにしたものがあり,TiMidity++もそのようなソフトウェアである。
以下にこのようなソフトウェアMIDI音源モジュールやMIDIプレーヤーを紹介する。
TiMidity++はMIDIデータをPCMに変換しながら演奏するためのMIDIプレーヤー。
音色データとして,GUS PatchやSoundFont,AIFFやWAVなどが利用でき,異なる音色データも混在して使用できる。
発音部を独立させた音源モジュール版もある。これはMIDI音源として利用できる。
MIDI Driverが実装されているバージョンもあるが,開発されたのが古くデジタル署名されていないためWindows 10/11でうまく動作させるのが難しい。
しかし,loopMIDI等(Virtual MIDI Cable)を使ってアプリケーションから音源モジュールとして利用できる。
Qsynthは,TiMidity++と同じような機能を持っているソフトウェア・シンセサイザーのFluidSynthを,GUIで操作できるようにしたアプリケーション。
FluidSynthはフリーでオープンソースの音源モジュール・シンセサイザー。マルチプラットフォームで動作し,ソフトウェアによりMIDI音源として音を出力出来る。
ロードできる音源データは搭載しているRAMの量に制限される。
FluidSynthはCで開発されていて,その機能を外部から使用できるAPIがある。他の言語のバインディングもいろいろ開発されている。
音源モジュール・シンセサイザーとして,SoundFontを音色データとして使用する。
MIDI Driverは実装されていないので,loopMIDI等(Virtual MIDI Cable)を使ってアプリケーションから利用する。
WildMIDIはGUS Patchを使用してMIDIファイルを演奏できるマルチプラットフォームで動作するフリーなMIDIプレーヤー。
GUIでの操作は実装されていなくて,コマンドラインでのインターフェースになる。また音源モジュールシンセサイザーとしては使用できない。
また他のアプリケーションに組み込んで使用できるライブラリーとしても提供されている。
音色データはGUS Patchが使用でき,SoundFontはサポートされていない。
VirtualMIDISynthはCoolSoftがBASS Libraryをベースに開発されているWindows用MIDI音源ソフトウェア。
Windows 10/11でも動作するデジタル署名されているユーザーモード·ドライバーなMIDI Driverも実装されている。
音色データはSoundFontが利用できる。
OmniMIDIはBASSMIDI Driverから派生して開発されているWindows用MIDI音源ソフトウェア。
Windows 10/11でも動作するデジタル署名されたMIDI Driver版として実装されている。またMIDI Mapperもサポートされている。
音色データはSoundFontが利用できる。
Cakewalk社がフリーで配布していたVSTiのサウンドフォントプレイヤー。
シンプルで動作も軽く,大容量のSoundFontでも読み込む事が可能。
こちらから入手できる。
音色データは,.sfz,.sf2,.wavが使用できる。
Studio One Primeに付属しているPresenceは,SoundFontを音色データとして使用できるソフトウェア・シンセサイザー。
Phenomeは,Prodyon社がフリーでリリースしているVSTiのサウンドフォントプレイヤー。
SoundFontが使用できる音源モジュール。
ダウンロードはこちらのページから出来る。
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